「日本で働きたい」を叶え、営業から設計へ──異国で掴んだキャリアの可能性
written by 紺野 天地
株式会社城南製作所
長野県上田市から、世界で走る自動車の「ドアウィンドレギュレーター(※)」を生み出す株式会社城南製作所。同社では、国内シェア1位を実現してきた技術力のもと、若手からベテランまで、エンジニアたちがものづくりに挑戦し続けています。
※自動車用ドアガラスの開閉装置
今回お話を伺ったのは、アメリカ拠点から転籍し、現在は設計技術者として活躍する Jeremy Ballard(ジェレミー・バラード)さん。日本への強い憧れを原動力に、営業職から未経験で設計職へキャリアチェンジ。新たな環境で自らの可能性を広げながら、世界のものづくりに貢献しています。
Jeremy Ballard(ジェレミー・バラード)さん
開発一部 設計二課
2020年6月 城南アメリカ入社
2023年8月 城南製作所に転籍
テンプル大学ジャパンキャンパスにて日本語について学んだ後、城南製作所のアメリカ子会社に営業として入社。少年時代から日本文化に強い興味を持ち、日本で働きたいという夢を叶えた現在は、SUBARU(スバル)向け製品の設計を担当している。
休日は長野の温泉や歴史的建造物などを巡り、妻と日本の文化を楽しんでいる。
きっかけは「好き」──日本文化が人生を動かした

――日本に興味を持ったきっかけについてお聞かせください。
原点は、子どもの頃に触れていたゲームやアニメです。
特に任天堂の『ポケモン』シリーズに夢中になり、テレビアニメも毎週欠かさず見ていました。好きな作品の世界がどこから生まれているのか知りたい。そんな興味が日本という国そのものへの関心につながっていきました。
――大学時代も日本にいらっしゃったんですよね。
はい。テンプル大学ジャパンキャンパスに進学して3年間暮らした後、アメリカへ帰国し、「日本語を使って働ける環境」を求めて就職活動を続けました。
その中で出会ったのが、城南製作所のアメリカ拠点(城南アメリカ)です。新しい挑戦でしたが、日本と関われる仕事に就けることが嬉しくて、営業職として入社しました。
――「日本で働きたい」という想いは当初からおありだったのですか?
ありました。面接の段階から希望は伝えていましたが、すぐに実現できるとは思っていませんでした。それでも、当時の上司がその思いを否定せず、「チャンスはきっとあるから頑張ろう」とむしろ尊重してくれて、転籍が決まったときはとても嬉しかったです。
一方で、「営業から製品設計への転身」という変化への不安も大きかったです。さらに、長野という場所での新しい生活。妻もまだ日本語を勉強中だったので、環境に馴染めるかという心配もありました。
――そのような不安はどのように払拭されたのでしょうか。
会社の手厚いサポートがあったことが大きいです。
住まい探しや手続きのサポートなど、慣れない土地での生活をスムーズに始められるよう支援してもらい、「一人じゃない」と安心して新しい挑戦へ踏み出すことができました。
世界中の自動車に搭載されている「誇り」

――現在担当されている業務について教えてください。
今はSUBARU様向けに、ドアウィンドレギュレーターをはじめとした自動車部品の設計を担当しています。図面の作成や仕様に応じたレイアウト検討、やり取りなどが中心です。最初は覚えることだらけでしたが、一つひとつの工程を先輩方から丁寧に教わりながら、知識と経験を積み上げています。
――営業経験が現在の仕事に活きている場面はありますか?
設計側の意図を営業の方へ言葉にして伝える場面や、お客様とのやり取りで役立っています。
例えば見積り一つでも、技術的な工夫でコストを抑えられる提案ができることもありますし、「営業の視点」と「技術の視点」の両方から最適解を探せることは、自分の強みだと思います。
――自分が関わったものが「世界中の車に使われている」という実感はありますか?
はい。長野県上田市でつくった部品が、国内外の車を支えていることを考えると大きなやりがいになります。
まだ世の中にないものを形にして、お客さまの元に届ける。その過程に自分が関われることを、誇らしく思います。「どんな製品があったら喜んでもらえるだろう」と車を使う方のことを想像しながら設計に取り組むのは楽しいです。

――印象に残っている挑戦はありますか?
新規のお客様向けに、ドアウィンドレギュレーターをイチから設計したことです。
何もないところから形にするのは難しかったですが、指示やアドバイスをいただきながら、自分のアイデアが製品として完成したときの達成感は忘れられません。イメージしていたものが現実になる。「ものづくりって本当に面白い」と感じた瞬間でした。
――これまで大変だったことは。
これ、というエピソードはありませんが、技術者としての知識や考え方がまだ身についていない頃は、分からないことだらけで苦労しました。
でも、困ったときに周りの先輩方が必ず助けてくれるので、心細さを感じたことはありません。みんなが同じ方向を向いて支えてくれる文化が、この会社にはあると実感しています。
仕事も暮らしも「自然体」で向き合える場所
――職場の雰囲気やコミュニケーションについては、どのように感じていますか?
とても話しやすい雰囲気です。分からないことは気軽に質問できますし、ちょっとした相談でも親身に聞いてくれる方ばかりです。
自動車業界は、新しいモデルが出るときなどの繁忙期と落ち着く時期がありますが、忙しいときこそ「チームで乗り越えよう」という連帯感が生まれます。SUBARUの担当業務が落ち着いているときは、他のメーカー担当の業務を手伝うなど、部署の垣根を超えて支え合うことも当たり前です。
――長野での生活はいかがですか?
とても過ごしやすいです。休日は妻と一緒に温泉に行ったり、上田城跡を見に行ったり、地域の魅力を楽しんでいます。日本の食文化も大好きなので、新しい料理を試すのも楽しみの一つです。最近は温泉まんじゅうにハマっています。

▲来日されたご両親と上田城にて
――生活面のサポートで助かったことはありますか?
たくさんありますが、最近だと、車のスタッドレスタイヤへの交換を同僚が手伝ってくれたことがありました。長野特有の気候に合わせた生活の知恵を、実体験と一緒に教えてくれたんです。仕事以外の場面でも支えてくれる仲間がいることが、本当に心強いです。
人と人、企業と企業をつなぐ「架け橋」に
――今後、挑戦していきたいことについて教えてください。
今は、海外拠点との打ち合わせの際に通訳として参加することがあります。日本語と英語、双方の橋渡しができる場面が増えていますが、まだまだ力不足だと感じています。
技術面はもちろん、コミュニケーションの面でももっと貢献できるように、語学力をさらに磨きたいです。将来的には第三言語も学び、韓国やインドなど新たな海外市場との架け橋になれたらと考えています。
――なぜ、コミュニケーションの力にこだわるのでしょうか?
「人と人をつなぐこと」が自分にとって大切だからです。
日本語を学び始めた理由も、言語を通して人と深く関わりたいと思ったからでした。技術も言語も、誰かの困りごとを解決するための手段です。その両方を活かして、より多くの人に信頼してもらえる存在になりたいという思いがあります。

▲花火を見上げるジェレミーさんと奥様
――キャリアの展望も伺えますか。
5年後、10年後にはチームをまとめる立場になりたいです。自分が先輩方に支えてもらったように、今度は自分が仲間を支え、導ける人になりたい。営業と技術、両方の経験を活かして、チーム全体がスムーズに連携できるようにする。それが将来の目標です。
――最後に、城南製作所で働くことに興味を持つ方へメッセージをお願いします。
いろいろなことに挑戦してほしいと思います。新しいことには不安がつきものですが、失敗を恐れずに踏み出せば、その先には達成感や喜びが待っています。
私自身、アメリカから日本に来て、未経験の分野に飛び込みました。怖さがなかったと言えば嘘になりますが、一歩踏み出したからこそ今があります。チャンスは探せば必ずどこかにあるはずです。勇気を持って、挑戦してみてください。
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企業HP:http://www.johnan-seisakusho.co.jp/
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