「会社は“あなたの人生の踏み台”」丸十電気が考える、社員と会社の関係
written by 紺野 天地
丸十電気株式会社
「会社は、人生をつくるための“踏み台”でいいと思ってるんですよ」。
そう語るのは、長野県長野市にある丸十電気株式会社の代表・久保田宏一さん。電気工事という生活を根っこから支える仕事に向き合いながらも、その語り口はどこか軽やかで、いい意味で“社長らしくない”印象があります。
一般的な「長く働いてほしい」とは少し違う価値観の裏側には、業界の未来や、人の人生に対する想いがあります。飾らない言葉の中に見えてくる「この会社らしさ」とは何か。久保田さんに、理念に込めた考えや、組織づくりで大切にしていることについて伺いました。
久保田宏一(くぼた・こういち)さん
代表取締役
長野県出身。電気工事の現場経験を経て、丸十電気株式会社の代表取締役に就任。現在は現場に近い距離感を保ちながら、組織づくりや人材育成、働き方の改善にも取り組んでいる。
「会社は人生の踏み台」という考えのもと、社員一人ひとりの選択を尊重し、外に出た後もつながり続ける関係性を大切にしている。
この業界で働くこと自体に、前向きになれるように
――まずは、御社の企業理念に込めた思いについて教えてください。
「私たちは、いい仕事をし、いい仲間と、いい人生をおくる」。この企業理念は前代表の会長が考えたもので、僕自身もすごく共感しています。
その中でも大事にしているのは、会社はあくまで人生のために使う場所、つまりは「踏み台」でいいということです。「ここで骨をうずめてほしい」とか、「会社のために尽くしてほしい」とは思っていなくて、むしろ、自分の人生や家族のために働く中で、この会社を使ってもらえたらいいという感覚に近いです。
――「踏み台」という表現が印象的です。
少し言い方は強いかもしれませんが、自分の中ではしっくりきています。
電気業界って、独立する人も多いんですよ。だったら無理に引き止める前提ではなく、外に出たあとも「仲間」でいられる関係のほうがいいし、結果的に業界全体も良くなると思うんです。実際に、うちを出ていった人と今でもつながっていますし、仕事で助け合うこともあります。
その人が自分で獲得した技術で一生、家族と共に安定した人生を送ってほしいんです。

――業界全体という視点も持たれているんですね。
そうですね。建設業って、正直イメージがあまり良くない部分もあるじゃないですか。きつい、汚い、危険……いわゆる「3K」のイメージがいまだに強くて、人も減ってきています。
だからこそ、「この業界で働くこと自体が前向きな選択になる」ようにしていきたいんです。
そのためには、会社という枠に閉じこまずに、人が循環していくような形のほうがいいと考えています。
――組織づくりで意識していることはありますか。
なるべくフラットな関係でいたいと思っています。上下関係がまったくないわけではないですが、あまりピラミッド型にはしたくなくて。イメージとしては三角形というより、台形のように横につながっている組織です。
「見て覚えろ」ではなく全部教える
――人材育成については、どのように考えていますか。
できるだけ早く一人前になってもらったほうが、本人にとっても会社にとってもいい。
だから、教えられることは全部教えるようにしています。
昔は業界全体に「背中を見て覚えろ」という文化がありましたが、僕はそれがあまり好きじゃないんです。安全面だけは徹底的に理解してもらいますが、それ以外で「まだ早い」とか「これは後でいい」と線を引くことは、基本的にしません。

――はっきりしたスタンスですね。
もちろん「経験が伴わないのにやらせるのはどうなんだ」という声もあります。でも僕としては、早い段階から経験したほうが絶対に成長すると思っています。結果的に失敗することもありますけど、それも含めて経験なので。周囲がサポートしますし、「挑戦して失敗したから」と怒ることなんてありません。
「やって見せて、やらせてみる」という繰り返しですね。口で説明するだけでは、やっぱり伝わりませんから。技術を身に着けてもらうことは、会社にとっても社会にとっても大事な投資だと思っています。
――若手の方も安心して経験を積めそうです。
そうであれば嬉しいですね。今の若い子ってすごく素直なんですよ。言ったことをそのまま受け取って、やろうとしてくれる。
今はYouTubeもあるので、自分で調べて学ぶこともできますし、「それYouTubeで見ました」って言われることもあります(笑)。でも、そうやって教える側も考えながら、一緒にアップデートしていける関係が理想です。
――この仕事ならではの「喜び」はどんなところにありますか。
電気工事は「最後」にすべてが結果として現れる仕事なんです。例えば工場の工事でも、最後に点灯試験をして、電気が通るかどうかを見る。その瞬間に、はじめて仕事の結果が分かります。
だから、現場が終わったあとには、必ず担当した本人にスイッチを押してもらうようにしています。自分が関わった仕事で電気がつく瞬間の感覚は、やっぱり特別です。それを味わってほしいし、その感動を忘れずにいてほしいなと思っています。

現場を楽にするための効率化
――1988年に当時の最先端設備を入れるなど、会社として効率化に積極的な印象があります。
前代表が新しいものや効率的なものが好きだったこともあって、それは社風として根付いていると思います。手作業だった時代にパソコンを導入したのも早かったと聞いていますし、長野市でCAD、積算ソフトを取り入れた企業としても、かなり早いほうだったみたいです。
実は今も、属人的になりがちな見積り作成が一括でできるソフトを開発しています。
――現場の働き方や効率化について、久保田代表の考え方を伺えますか。
正直、建設業はまだまだアナログな部分が多いです。だからこそ、変えられるところは変えていきたいという意識は持ち続けています。この数年でも、一人ひとりにスマホとPCを支給しましたし、図面や写真の共有をデジタル化した施工管理用のソフトも導入しました。

――現場目線での工夫も多そうですね。
現場ってただでさえ体力を使うし、天候にも左右されるので、それ以外のところで余計な負担をかけたくないんです。「効率化」というと、会社側の都合に聞こえることもありますけど、僕の中では現場を楽にするためのものという感覚が強いです。
――変化に対して、どう向き合うかも重要になりそうです。
そうですね。変えないといけない部分と、変えなくていい部分は分けて考えています。
例えば、安全に関わることや、現場で大事にしている基本的な動きは、変えるべきではないと思っています。
一方で、やり方やツールに関しては、もっと柔軟に変えていっていい。そこを履き違えると、「ただ新しいことをやっているだけ」になってしまうので、何のためにやるのかは常に意識しています。
「責任」に応えられる人であってほしい
――久保田代表の人に向き合っている言葉が印象的です。
そうですね。そこは僕の軸で、これからも変わらないと思います。
ただ、「自由」というのは、「結果に責任を持てる」からこそ許されるものです。現場では自分で考えて動くことや、周りと協力することが必要になりますし、一つの判断が大きな影響を与えることもあります。
――「自由」と「責任」はセットということですね。
はい。どの仕事でもそうですけど、結局のところ一番大事なのは「お客様に頼まれたことに応えられるかどうか」じゃないですか。だからこそ社員には、良い意味であきらめ悪く、「責任」にしっかり向き合える人であってほしいですね。
――どんな方がこの仕事に向いていると思いますか。
特別なスキルがあるかどうかよりも、コツコツ続けられる人のほうが、この仕事には合っていると思います。
現場の仕事って、すぐに結果が出るものではないので、積み重ねていくことが大事ですし、その中で少しずつできることが増えていく。そういう過程を楽しめる人であれば、自然と力もついていくはずです。

――最後に、この記事を読んでいる方に一言お願いします。
ここでずっと働くことを前提に考える必要はありません。それぞれの人生の中で、この会社をどう使うかは自由です。
ただ、ここで過ごした時間が、その人にとって意味のあるものになったらうれしいですね。
その結果として、一緒に働く時間が長くなれば、それはそれでいい。そんな関係でいられたらと思っています。
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