地域の「当たり前」を支えるという使命──社会資本を守り続ける、長野県建設技術センターの仕事
written by 紺野 天地
公益財団法人 長野県建設技術センター
道路や橋、河川や砂防施設、これら社会インフラを私たちは普段から当たり前のように使っていますが、「何も起きない日常」は、多くの人たちの手により、創り、守られています。
その一端を担い、自治体を技術的な側面から支えているのが、「公益財団法人 長野県建設技術センター」です。昭和47年の設立以来、専門的な知見と積み重ねてきた経験をもとに、社会資本整備を担ってきました。
今回お話を伺ったのは、約35年にわたってこの現場を見続けてきた、事務局長の前島治(マエシマ・オサム)さん。建設技術センターという組織が果たしてきた役割と仕事に込める思いについて話を聞きました。
前島治(マエシマ・オサム)さん
事務局長
大学で土木工学を学び、平成2年、新卒で長野県建設技術センターに入職。以来、公共事業における技術支援、積算・施工監理支援、自治体職員への助言などに長年携わる。現在は組織を統括する立場として、若手職員の育成や働きやすい環境づくりにも力を注いでいる。
地域の暮らしを「根」から支える存在
――技術センターの理念や存在意義について教えてください。
当センターは、昭和47年に設立されて以降、社会資本整備を専門的な立場から支援してきました。
事業としては、「公共事業に関する技術支援」「積算や施工監理の支援」「建設技術者の育成を目的とした研修事業」「公共事業で使用される建設材料の試験事業」。この4つを柱に、それぞれの立場から地域を支えています。
――具体的には、どのような場面で自治体を支援されているのでしょうか。
例えば「建設技術支援」の分野では、技術者が十分に確保できていない市町村からの相談を受けることが多くあります。技術的な助言や相談への対応はもちろん、災害時の応援なども行い、事業の発注段階から工事が完成するまで、継続的に支援します。
道路や河川、砂防といった社会インフラは、地域の方々の暮らしと密接に関わっています。そうした公共事業が、安全で品質の確保された形で完成するよう、発注者である自治体に寄り添います。

――自治体にとって、技術センターの存在はどのような安心につながっていますか。
発注者である自治体は、工事がどのような流れで進んでいくのか、現場のことまで把握するのが難しいケースもあります。そうしたときに、当センターが「これはこういう理由で、こう進んでいますよ」と説明しながら一緒に事業を進めていきます。
専門的な部分をかみ砕いて伝え、判断を支えることで、安心して工事の施工監理を依頼していただける。その積み重ねが、信頼につながってきたのだと思います。
――「公益財団法人」という立場だからこそ担える役割についても教えてください。
営利企業ではないため、事業の規模や金額にかかわらず、早い段階から相談に乗ることができます。発注者、施工者どちらかに偏ることなく、公平公正な立場で「こう考えられますよ」と助言できるのは、当センターならではの存在意義と言えるかもしれません。
迷いのない道ではなかった──助けの中での歩み
――前島さんが入社されたのはいつ頃になりますか。
平成2年です。大学を卒業して、そのまま技術センターに入りました。気づけばもう35年ほどになります。小さい頃から、父が建設業に携わっている姿を見て育ったので、建設という仕事は、私にとって特別なものというより身近な存在だったと思います。
――当時、なぜ技術センターを選ばれたのでしょうか。
正直に言うと、はっきりとした志があったわけではありません。大学で土木工学を学んでいたので、卒業後は施工会社で働くのだろうと、漠然と思っていました。
そんな中で、親から「技術センターというところがある」と勧められたんです。公共事業に関わる大きな仕事ができる場所で、難しい工事や専門性の高い業務にも携われると聞いて、「面白そうだな」と感じたのがきっかけでした。
――入社後、印象に残っている仕事や出来事はありますか。
強く印象に残っているのは、実家の近くで行われたトンネル工事です。
昔からの知り合いや親戚が暮らしている地域で、現場に入っている作業員の中にも顔見知りの方がいたりして、「頑張ってるね」と声をかけてもらうこともありました。
その現場に関わることができたのは、私にとって特別な経験でしたね。近所の方々のために仕事ができていると実感できたことは、素直に嬉しかったです。

――一方で、大変だった経験や、挫折を感じたことがあればお聞かせください。
このトンネル工事の積算を任されたときです。トンネル工事は準備する資料も多く、金額も非常に大きい。下手をすれば十数億円単位になります。
積算基準の改定が重なった時期でもあり、「本当に自分にできるのだろうか」という不安は、正直かなり大きかったです。
――その不安は、どのように乗り越えられたのでしょうか。
社内の先輩職員はもちろん、一緒に仕事をしていた県の担当者など、トンネル事業に携わってきた方々から、多くの助言をいただきました。「ここは必ず確認した方がいい」「この点は見落としやすい」と、一つひとつ教えてもらいながら進めていったんです。
一人では到底できなかったと思います。周囲の支えがあったからこそ、初めてのトンネル積算を最後までやり切ることができました。
現場での経験を、判断力へ──先頭に立つ立場として
――現在はどのような立場で仕事をされていますか。
事務局長として、現場で起きていることを把握し、全体を見渡しながら判断を支える役割を担っています。現場に出ていた頃とは違い、直接手を動かすことは減りましたが、その分、これまでの経験をどう活かすかが求められる立場だと感じています。
現場で必要なのは「スピード」と「的確さ」です。私は長年施工監理をしてきたので、現地の状況を思い浮かべながら、「この場合、次に問題になりそうなのは何か」「どこに注意すべきか」を考えるようにしています。
――その判断力は、やはり経験から培われたものなのでしょうか。
そう思います。正直に言えば、今の立場になっても、すべてを分かっているわけではありませんし、むしろ、「自分はまだまだだ」と感じる場面も多いです。
ただ、起きている事象だけを見るのではなく、その先にあるリスクや影響を考えられるのは、現場で何度も悩み、失敗し、助けられてきたからこそ、自然と身についた感覚かもしれません。
――そうした経験がマネジメントにもつながっているのですね。
そうですね。現場の声を聞き、職員の考えを尊重しながら、最適な判断を導くことが大切だと考えています。
過去に、自分が分からずに悩んだ経験があるからこそ、「現場の人が何に困っているのか」「何を求めているのか」を想像し続けたいと思います。
人がいてこそ、センターは続いていく──次世代へのメッセージ

――技術センターにとって最も重要な存在は?
間違いなく「人」です。技術センターで働く職員は、それぞれが社会に提供できる技術を持った、大切な財産だと思っています。
だからこそ、働き方や職場環境の整備、個人の技術力向上やスキルアップのための研修の機会づくりを、継続的に行ってきました。新しく整備した制度もありますし、これからさらに改善していく余地もあります。
――未経験や他業種から入られる方もいらっしゃるのでしょうか。
はい。土木を専門に学んできた職員だけでなく、異なる業種を経験してから入ってきた人もいます。入職後は、先輩職員と一緒に少しずつ公共事業の全体像を学んでいきます。
技術は、入ってからいくらでも身につけることができます。この仕事において大切なのは、最初から高い技術力があるかどうかではなく、人と向き合い、相手が何に困っているのかを考え、解決に向けて一緒に進もうとする姿勢です。
――働きやすさの面でも、さまざまな制度が整ってきていますね。
最近では、育児や介護に関する制度も整備しました。実際に、男性職員が数か月単位で育児休業を取得したケースもあります。
休みに入る際には、その職場だけに負担が偏らないよう、他の事務所から応援を出すなど、組織としてフォローする体制をつくっています。制度があるだけでなく、周囲が理解し、支え合える風土があってこそ、安心して働けますから。
――これから一緒に働く仲間には、どのようなことを期待されていますか。
特別な条件は求めておらず、仕事にまっすぐ向き合い、真剣に考え続けられる人と一緒に働きたいと思っています。
たくさん悩み、苦労し、失敗もすると思います。ですが、その一つひとつを周囲のサポートを受けながら乗り越えていくことで、自分の力になっていくはずです。
――最後に、この記事を読んでいる求職者の方へメッセージをお願いします。
私たちが関わる事業は、とても規模が大きく、後世に残る仕事です。建設機械が動く現場を間近で見たり、地図を書き換えるような事業に携わることができたりと、他ではなかなか得られない経験ができます。
何より、地域に暮らす人たちの安全や安心を支える仕事です。社会にとって必要とされる仕事に、責任を持って向き合いたいと考える方には、ぜひ一緒に働いてほしいと思います。長野県建設技術センターは、人で成り立つ組織です。その一員として、ともに未来を支えていける方をお待ちしています。
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採用HP:https://www.npctc.or.jp/recruit/