社員たちが自分の未来に安心できる会社をつくる――メディカルケア新社長のビジョン

レッド

written by 五十嵐清美

長野県千曲市にて、福祉用具レンタル・販売や介護住宅改修事業を展開するメディカルケア株式会社。同社は医療機器のメンテナンス事業を行う、エムシーサービス株式会社内にあった福祉事業部門が分社化して生まれました。医療機器の分野で得たノウハウを活かし、介護施設における福祉設備の充実など、質の高い介護サービスの提供に取り組んでいます。

今回はメディカルケアの新社長となった武田洋(たけだ ひろし)さんに取材し、今後どのように会社を作っていこうと考えているのか、そのビジョンを伺いました。

代表取締役社長 武田 洋(たけだ ひろし)さん

代表取締役社長 武田 洋(たけだ ひろし)さん

1972年(昭和47年)長野県千曲市生まれ、千曲市育ち。 3人兄弟の末っ子。関東の大学卒業後、食品の卸売会社にて水産物の卸売営業を行う。兄と姉が県外で結婚をしていたこともあり、父から「こっちに帰ってこないか」と言われ、2003年に長野に戻ることを決めた。転職のきっかけは父親。さまざまな役割を経て、2023年に代表取締役社長に就任。高校1年生と中学1年生の息子がいる。休日は小学生のドッジボール指導に勤しむ。

転職のきっかけは父親。さまざまな役割を経て社長就任

――まずは社長のご経歴から教えてください。

私は生まれも育ちもメディカルケア本社がある千曲市です。東京の大学を卒業後、まず食品の卸売会社に就職し、水産物の卸売りの営業をしていました。その後メディカルケアに転職します。

転職のきっかけは父です。メディカルケアは、親会社のエムシーサービス(当時の社名はサクラサービス)の福祉事業部門が分社化してできた会社なのですが、父がエムシーサービスの役員をしていました。その当時、私は東京にいたのですが、兄と姉が県外で結婚していたこともあったのでしょうね、父から「こっちに帰ってこないか」と声をかけられたんです。就いていた仕事が嫌だという気持ちはなかったのですが、新しい道に進むにはいい機会だと思い転職することを決めました。

 

――代表就任までの流れを教えてください。

管理本部の配属になり、それ以来一貫して、総務・経理・人事を担当してきました。塚田前社長が管理本部の責任者をしていたので、経営的なことも教えていただき、さまざまな経験をしながら業務を覚えていきました。

入社して半年ほど経った頃に分社化してメディカルケアができました。それが2003年で、その際に私も転籍し、2011年に管理本部の部長になり、それから12年経ったこの2023年に社長就任という流れになります。

総務や経理のことに取り組みながら、経営計画にも関わっていく機会が増え「自分だったらこうしたいな、もっとこんなことができるんじゃないか」と考え始めるようになりました。自主的に研修に参加したり、実際に計画を立案、実行したりしていくうちに、前社長から任せてもいいと思っていただけたのかもしれません。

大役に任命されたので最初は戸惑いと不安でいっぱいでしたが、これまで以上に会社を良くしていこうと腹を決めました。

 

――社長自身が働く上で大事にしていること、これだけはまげない信念などあればお伺いしたいです。

私個人の信念というよりは社長として意識していることですが、「決断すること」が社長の仕事だということです。たとえ判断材料が少ない中でも、状況を見極め決断するのが社長の大事な役割です。それが、今出来ているかと言えば、まだまだですが、最終的な責任者が自分であることを強く意識し、決断しなければならないと感じています。

あとは、人や環境のせいにしないことですね。何かうまくいかないことがあったときは、自分に原因があると考えて対処していく。そう心がけています。

 

――社長として自社を見たときに、これからも変えずに大切にしていきたい文化や仕組みはありますか。また反対に変えたいと思うこともあればお聞かせください。

社員を見ていると、「どんな面倒なことでもやります」「会社の利益にはならないけれどお客さまのためなら」など、お客さまのことを優先して行動している人が多く大変頼もしく思っているのですが、こういう社風は変わらずに残していきたいと考えています。

また、福祉用具のレンタルや販売は介護サービスなのですが、一般企業が持っているような営業的な側面も強く持っており、数字にこだわるようにしています。ここも変えずにこだわり続けていきたいですね。

変えていきたいところは、各部署同士でのシナジーが発揮できていないことです。福祉用具事業、法人営業部門、生活支援事業、介護施設事業、居宅介護支援事業など、様々な事業を行っていますが、部署間でコミュニケーションをとること、連携することはまだまだだなと思っています。互いに連携を強化して「組織として」相乗効果が出せるよう考えていく必要があると感じています。

 

福祉というカテゴリにとらわれず新たな顧客の創造を目指す

――メディカルケアを今後どのような会社にしていきたいとお考えでしょうか。

「高齢者、家族、介護・医療に携わる人々に、安心・快適・便利を提供することを通じ社会に貢献します」、「社会のニーズを見出し、私たちの持ち味を掛け合わせることで、顧客の創造に挑戦します」、「社員が新しいことに挑戦し、自身の成長を感じ、自身の未来に安心できる会社を作り、社員の幸福を実現します」。

この3つの会社のミッションをしっかりと体現していくことです。

これがまさに、今後の会社の姿を集約したものだと思っています。

 

――ミッションを実現するためには、どのような行動が必要でしょうか。また、実際に取り組んでいることがあればお聞かせください。

必要なことは3つあります。まず1つ目は福祉というカテゴリにとらわれずに、お客さまのためになるんじゃないか、地域のためになるんじゃないかと思うものがあれば何でもビジネスにしていくという広い考えを持つことです。

2つ目は顧客の創造です。私たちは介護保険サービスが中心ですので、よく「これから高齢者人口は増えていくのだから安泰な業界ですね」と言われるのですが、決してそんなことはありません。国の制度に左右されるリスクは常にありますし、物価上昇、人件費上昇等により、赤字の事業所も増えており介護サービス業界全体の成長は鈍化しています。だからこそ市場のニーズと自社の持ち味を掛け合わせ、新たな顧客を創造していくことは必要不可欠です。

”顧客の創造”のいい例がユニクロのヒートテックですね。昔は暖かい肌着というと、ババシャツ、あまりかっこよくないというイメージが強かったのですが、そこをユニクロが戦略的に「機能性が高くて、さらにかっこいい肌着」というイメージに変え、新しい市場を作りました。こういう発想の転換、市場の創造ができたら凄いなと思います。

 

――具体的にどのような事業展開を考えていらっしゃるのでしょうか。

福祉用具のレンタルは公的介護保険サービスですが、以前に比べると伸び率が鈍化していますし、制度改正リスクもあります。しかし、求めている方はたくさんいますし、これからも伸びていく領域であるのは間違いありません。サービスの充実、福祉用具のメンテナンス機能の拡充、既存エリアの深耕を実施し、新規エリアの出店も検討をしたいと思います。既存エリアの深耕という意味では、2023年12月(取材2023年11月)には安曇野店をオープンしました。これにより、安曇野市の地域密着度を高めていきたいと思います。

また、中期経営計画の一環として5年ほど前から取り組んでいるのですが、ケアマネージャー様に向けた福祉用具の体験型勉強会にも力を入れています。「福祉用具のレンタル、購入、住宅改修を組み合わせることで、より安心で快適な住環境が実現できる」ということを介護の計画を作っているケアマネージャー様に実際に体験してもらうのです。

介護の現場となる部屋をリアルに再現し、そこにさまざまな福祉用具を置いて、使い方やいかに便利かを実際に体験してもらう。こうした勉強会から、ケアマネージャー様経由で一人でも多くの利用者様に安全で快適な環境を提供することが目的です。

介護施設に関しては、既存の施設で収益性を上げる施策を行い、従業員や利用者様の満足度を上げることに注力していきたいです。具体的には、まず部屋が空いている時間や期間を極力少なくすること。それに加えて、人手が少なくても従業員の皆さんに負担をかけずに運営できるような環境整備、設備投資も進めていきたいです。そういったことを地道に行い、従業員のため、利用者のための施設づくりを進めていきたいと考えています。

また、営業エリアはまだ一部なのですが、「生活に関する困りごと、できることは何でもやります」という生活支援サービスを提供しています。エアコンの掃除や庭の草取り、お部屋のお掃除から電球の交換まで、ご要望に合わせて行っています。これは介護保険サービスではなく自費でご利用いただくサービスですね。利用者様のお宅に訪問した際には福祉用具のことだけでなく「生活全般で何かお困りごとはありませんか?」というようなお声かけをして、さまざまなお困りごとを解決したいと思っています。こういった取り組みをしながら、優位性を作るようにしています。

 

人手不足が叫ばれる今、社員の幸福に重きをおいた制度が求められている

――ミッションを実現するために必要な3つ目は何でしょうか。

最後の3つ目は社員の幸福です。これは経営理念としても掲げており、会社としても昔から変わらずに大切にしているものです。私たちの考える社員の幸福とは「新しいことに挑戦すること、自身の成長を感じられること、自分の未来に安心できること」だと考えています。

これからは益々労働人口が減少していきます。社員が幸福を感じ、ここで働きたいと思ってもらえなければ、どんなにニーズのある事業であっても会社は続いていきません。事業も成功させるためにも、人材を大事にする会社であり続けたいですね。

 

――社員が幸福を感じられるため、具体的にどのようなことに取り組んでおられますか。

評価制度を2023年10月から一新しました。それまでは求めるウエイトは多少違えど、若手も中堅も評価対象となる項目はみな一緒だったんですが、若手、中堅、管理職、それぞれに求めるものは何かということと、また、職種によっても細かくわけました。そうすることで、それぞれの役割ごとに何を重視して仕事に取りくめばいいかがわかりやすくなったと思います。さらに、定年後の頑張りも評価できるように、再雇用された方向けの人事制度も構築しました。新しい評価制度は経営と人事だけで決めるのではなく、それぞれの部署の管理職の意見を聞き、取り組みました。

社員のモチベーションが高まりやりがいを感じられるのは、何か新しいことに挑戦することや、自分のやりたいことを提案し採用されることだと思います。そのためには会社側が挑戦できる環境を整え、新しいことを自ら積極的に取り組む人を評価できる仕組みをつくることが必要です。まだまだ不十分なところも多く、もっとこうしていきたいという思いやジレンマもありますが、これからも取り組み続けます。

 

――ありがとうございました。最後にこの記事を読まれる求職者さんに向けて一言メッセージをお願いします。

自分の力で成長したいという意欲のある人、どんなことでも自分ごととして頑張れる人。

そういった方にぜひ興味を持ってもらえたら嬉しいですね。そういった方を迎えられるように、会社として環境や制度をしっかり整えていきます。

 

メディカルケア株式会社について

・ホームページ:https://sakura-care.co.jp/

・採用情報:https://recruit.sakura-care.co.jp/

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